【映画レビュー】ドクター・ストレンジ(2016年・115分)★8

Date
2021/11/30
Update
2022/8/12 6:29
Tag
アート
映画★8

作品情報

タイトル:ドクター・ストレンジ
公開年:2017年
上映時間:115分
監督:スコット・デリクソン
あらすじ:
傲慢で天才的な外科医でありながら、不慮の事故で両手の機能を損なわれ、全てを失ったスティーヴン・ストレンジ。絶望の淵にあった彼が最後にたどり着いたのは、人知を超えた“魔術”の力。自分の手を治すために魔術の修行に励む中、しだいに強大な敵との戦いに巻き込まれていく。しかし、医師として人の命を救うことへの誇りを持つ彼は、敵であっても人を傷つけたくない。医師ゆえに敵ですら傷つけられないということに葛藤する彼は、いかにして世界を守るのか?(Filmarksより)

感想・評価

まぎれもなく、鑑賞したこの日この瞬間、この映画は僕の物語であった。
色々なタイミングが重なり、この映画のストーリーと僕の近況があまりも重なってしまったので、映画レビューというよりは自分語りだが、思いの丈を残したいと思う。
 
映画の序盤のシーン。名声におぼれて命を選別する、高慢なスティーブンが描かれる。その姿に、映画を利用した自己顕示に躍起になっていた、かつての僕が重なった。
映画を見て感じたことを人に伝えたい。他ならぬ僕というフィルターを通して、僕のことを多くの人に知ってほしい。
今思えばあの頃は、どこかそんな傲慢さを携えながら、映画を「浪費」していたような気がする。
 
2019年。
転機が訪れ、僕は泥臭い営業畑から一転、趣味だった「デジタル」を仕事にすることができた。
勤務地は遠くなったが、人生に充足感をおぼえていた。
だが困ったことに、「デジタル」は、趣味と仕事とでは全く異なる世界だった。そこは、かつて僕が見てきた面白おかしく自由な世界ではなく、論理と効率に縛られた不自由な世界だった。
ギャップを感じつつもやる気に満ちていた僕は、そんな無機質な価値観にあてられ、少しでも効率よく生きてやろうと考えるようになった。だから、片道1時間の通勤時間を、もともと好きだった映画鑑賞の時間にあてることにした。
論点をまとめろ…人につたわる表現でアウトプットしろ…
観るだけじゃ勿体ないと思い始めた僕は、映画の感想をSNSにしたため始めた。
アウトプットを絶やすな…リーチを稼げ…ゴールから逆算しろ…
僕は、月に何本、年に何本、という鑑賞本数の目標を掲げるようになった。
今思い返しても、それはさながらドルマムゥの甘言にのまれて闇に堕ちるカエシリウスのようだった。
本当は誰よりも命を救いたくて、知恵と技を身につけたスティーブン。
彼もまた、医療の論理と効率に振り回され続け、自分がいちばん大切にしていたことを見失ってしまったのかもしれない。
延髄に銃弾が入った患者をスティーブンが救ったあと、患者の家族に感謝されるシーンが遠く無音なカットだったのがとても印象的だった。
本当は、その瞬間を何よりのやりがいにしていたはずなのに。
 
パーティに向かう車中でも、軽薄な態度で命を選別するスティーブン。
神に見透かされるようにして、彼はどん底に堕ちる。
スティーブンを襲った不慮の事故のように、ウィルスの力によって僕の通勤時間と“効率的な計画”は壊された。が、すでに大切なものを見失っていた僕は、あの手この手でもがいた。
とにかく、時間を無駄にはしたくない。YouTubeを始めたり、ブログを新しく作ったり、無我夢中でバタバタと動き回った。が、とうとうそのうちガス欠になった。
キャリアも、財産も、最良のパートナーのパーマーの信頼も、すべてを失ったスティーブン。唯一、彼のもとに残ったものがあるとすれば、恋人のパーマーから贈られた腕時計くらいだ。失われたものを取り返そうとカマータージを目指すが、あろうことか、暴漢に襲われその腕時計すら壊されてしまう。
だが…すべてを失ったとき、彼の新たな冒険への扉がひらかれた。
「高くつくぜ」「いくらだ?」「金じゃない」
 
僕は全てに疲れてしまい、試みたすべてを消し去り、目を背けるかのようにして、とうとう映画を観ることすらしなくなった。
本当は、ただ映画が大好きなだけだった。ただ映画をみて、感動して、友達と感想を交わす時間が大好きなだけで、アウトプットなんてどうでもよかった。
大切なものを見失った僕のもとに、自分を見つめなおすために、どこかからこの映画が贈られてきたのかもしれない。
「多くの人の命を救いたい」
大切なことに立ち返ったスティーブン。
彼にならって、映画をみる大好きな時間と、自分のペースでインターネットに向き合う時間、僕にとって何よりも大切なそれらの時間をゆっくりと取り戻し、生涯大切にすることを誓った。

採点

★8:これを切り口に映画の話を振れる

視聴リンク

採点基準

★10:別格の思い入れ。殿堂入り。
★9:度々話題にし続けちゃうかも
★8:これを切り口に映画の話を振れる
★7:好き。場が映画の話なら話題にする
★6:人に話振られたら「良いよね」と言える(印象深かった何かがある)
★5:可もなく不可もなし
★4:微妙だし記憶に残らなそう
★3:つまらない上に不満
★2:途中で諦めるレベル
★1:嫌い。生理的に受け付けない。