映画「ドント・ルック・アップ」レビュー:シリアスだが軽薄、乱雑だが深淵、感情全部マシマシの新感覚ディザスター

作品情報

タイトル:ドント・ルック・アップ 公開年:2021年 上映時間:145分 監督:アダム・マッケイ あらすじ:
天文学専攻のランドール・ミンディ博士(演:レオナルド・ディカプリオ)は、落ちこぼれ気味の天文学者。 ある日、教え子の大学院生ケイト(演:ジェニファー・ローレンス)とともに地球衝突の恐れがある巨大彗星の存在を発見し、世界中の人々に迫りくる危機を知らせるべく奔走することに。 仲間の協力も得て、オーリアン大統領(演:メリル・ストリープ)と、彼女の息子であり補佐官のジェイソン(演:ジョナ・ヒル)と対面したり、陽気な司会者ブリー(演:ケイト・ブランシェット)によるテレビ番組出演のチャンスにも恵まれ、熱心に訴えかけますが、相手にしてもらえないばかりか、事態は思わぬ方向へー。 果たして2人は手遅れになる前に彗星衝突の危機から地球を救うことが出来るのでしょうか!? (Filmarksより)

感想・評価

「もし、自分が余命あと半年と宣告されたら?」 こんな想像をしたときに浮かぶ、 ショック、悲しみ、焦り、怒り、開き直り、縋り、諦め… それら全ての感情が変遷が詰まったような、その心の中の顛末を描いたような作品だった。
博士が路上に車を停めて彗星を見上げるシーン。 焦りがストンと諦めに変わる感じが、強烈に印象的だった。 絶望的なシーンのはずなのに、かけがえのない宝石のような美しさがあった。
人より弱い心をもっていた(精神薬漬けだった)博士が、 超現実的な世界では壊れずにいつづけたのもなにか示唆的だ。
散りばめられたコメディ成分が、冷徹でシリアスなストーリーの中に、笑いと腹立たしさをトッピングしてくれる。
終末系で一番好きだった「トゥモロー・ワールド」を塗り替えたかも。 映画体験としていかに楽しめるか、でいうとバッチリだった。
無慈悲さのなかに、趣味の悪い意地悪さは感じなかった。 なにか特定の考えや存在への嫌がらせというよりは、「全てを否定してぶっ壊す」ことが最大の目的である感じ。 陰謀論と科学の二項対立でどちらかを贔屓するわけではなく、ぜんぶひっくるめてめちゃめちゃにぶっ壊すから、すごくフェアで、何かを押し付けられている感じがしない。 みたことないタイプのディザスターで楽しかった。
とはいえ全体のストーリー顛末はマジで救いがないし、「ファニーゲーム」級のトラウマを負う人もいるかもしれない。 僕も、最後の方のシーンの「ビルの屋上」が表現として強烈すぎて、生々しすぎてさすがに直視できなかった。あれは凄すぎる。
そんな負傷者をなだめるために、エンドクレジット周りのシーンはやけに陽気で、ふざけていたのかな。 「少しマジになりすぎたけど、俺らはトラウマ映画をつくろうとした訳じゃないからそこんとこヨロシク!」的な。

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採点

この映画の評価は…
★9:度々話題にし続けちゃうかも
他にも、観た映画を独断と偏見で採点してます 他のレビューと採点基準は以下
  • 採点別まとめ
★10:別格の思い入れ。殿堂入り。
★9:度々話題にし続けちゃうかも
★8:これを切り口に映画の話を振れる
★7:好き。場が映画の話なら話題にする
★6:人に話振られたら「良いよね」と言える(印象深かった何かがある)
★5:可もなく不可もなし
★4:微妙だし記憶に残らなそう
★3:つまらない上に不満
★2:途中で諦めるレベル
★1:嫌い。生理的に受け付けない。