映画「MIND GAME マインド・ゲーム」レビュー:映画を飛び出し、この世の全てに感謝したくなる究極の体験

作品情報

タイトル:MIND GAME マインド・ゲーム 公開年:2004年 上映時間:103分 監督:湯浅政明 プロデューサー:田中栄子 あらすじ:
「なんて無様な人生、なんて醜い死に方、まだ、20歳なのに…」 最低にカッコ悪い死に方をした男が、生への執念と気合だけを頼りに、猛ダッシュで復活! (Filmarksより)

感想・評価

この映画は、人生に対するひとつの答えだ。 なんとなく観たのに、自分にとって極めて重大な作品になってしまった。 初鑑賞は3ヶ月ほど前だが、もう既に3回は観てる。 何度観ても涙が止まらない…
ただ正直、人は選ぶ。 ぶっ刺さる人は極めて少ないだろうとも思う。 心のアンテナを全く向けずに観ると、「ハチャメチャでフシギなクレヨンしんちゃん」的な印象に留まってしまうだろう。
だが待ってほしい。 この映画がみせるクレヨンしんちゃん的なノリの中に垣間見える「マジな表情」にぜひ注目を向けてほしい。
この映画は、全ての人生への讃歌である。 誰しもがどんな生き方をしてもいい。 悪人だっていい。 金持ちも貧乏も関係ない。 人種や思想なんて、言うまでもない。 ただ、前を向いて、人生を面白がって、生きてさえいればいい。
言語化するとありきたりで説教臭いのだが… この映画を観ると、そのようなプリミティブなことを感覚ベースで叩き込んでもらえる。 仏教や禅などに学ぶ生き方や哲学、それらがもたらす心へのポジティブな作用をカジュアルに得られる映画、といっても過言ではないのではなかろうか。
この映画が語る「人生の本質」は、そのような包容的なメッセージだけに留まらない。 極めて情熱的で根源的な、人の思い、衝動、突き進む情熱… 生きる上で湧き出るそれらのエネルギーに対する描写も、いちいちあまりにも見事だ。
例えば、ヒロインのみょんちゃんと交わるシーン。 「官能的」の次元を遥かに超えていて、極めてリアルに行為そのものの意味やエッセンスが表現されている。
クライマックスのシーン。 「前方の一点に向って突き進む」ことのプリミティブさに、ハッとさせられる。 ジェットコースター、スペースシャトル、空飛ぶヒーロー、生まれる瞬間、死ぬ瞬間… 人間にとってのあらゆる「とてつもない瞬間」に通じるそのイメージを携えながら、物語は大爆発する。
そして、オープニングとエンディングでの、日本の街に咲くあらゆる人生のモンタージュ。 宇宙があり、地球があり、人類があり、社会があり、家庭があり、自分があり… その連綿たるパターンの中に確かに自己が存在していること、ただそのことに甚だしい感動を覚える。
仕事、人間関係、お金、病気… どんな悩みに苛まれた時であれ、「ただその中にいる」ことがこの上なく最上級にヤバく、それだけで人生は満点だということを、心の底に刻もう。
本当にこの人生に生まれて、今の家族や友達に囲まれて、この映画を観られて、よかった。 これから死ぬまで、ずっと元気に生きよう。 映画を飛び出し、普段の価値観を飛び出し、雲の上まで吹っ飛んで、このようなあさっての次元の感想を抱かされる。 そんな究極の映画だった。
※ちなみに、あまりにも衝撃を受けたのでその後色々と調べたところ… この作品が織りなす強烈な感動のフィクサーは、監督の湯浅政明でも原作者のロビン西でもなく、おそらくプロデューサーの田中栄子だった。 (もちろん、湯浅監督やロビン西の仕事も素晴らしいことは言うまでもないが) 彼女が携わる作品はことごとく、こういうプリミティブで哲学的なメッセージが込められている傾向にある。 彼女へ最大のリスペクトを贈るとともに、今後も最大限に注目していきたい。

視聴リンク

採点

この映画の評価は…
★10:別格の思い入れ。殿堂入り。
他にも、観た映画を独断と偏見で採点してます 他のレビューと採点基準は以下
  • 採点別まとめ
★10:別格の思い入れ。殿堂入り。
★9:度々話題にし続けちゃうかも
★8:これを切り口に映画の話を振れる
★7:好き。場が映画の話なら話題にする
★6:人に話振られたら「良いよね」と言える(印象深かった何かがある)
★5:可もなく不可もなし
★4:微妙だし記憶に残らなそう
★3:つまらない上に不満
★2:途中で諦めるレベル
★1:嫌い。生理的に受け付けない。