【映画レビュー】MIND GAME マインド・ゲーム(2004年・103分)★10
Date
2022/04/09
Update
2022/11/28 15:14
Tag
アート
映画
サイケ
作品情報
タイトル:MIND GAME マインド・ゲーム
公開年:2004年
上映時間:103分
監督:湯浅政明(プロデューサー:田中栄子に拍手!)
あらすじ:
「なんて無様な人生、なんて醜い死に方、まだ、20歳なのに…」最低にカッコ悪い死に方をした男が、生への執念と気合だけを頼りに、猛ダッシュで復活!(Filmarksより)
感想・評価
この映画は、人生に対する答えだ。
なんとなく観たのに、自分にとって最も重大な作品になってしまった。
初鑑賞は3ヶ月ほど前だが、もう既に3回は観てる。何度観ても涙が止まらない…
ただ正直、人は選ぶ。僕ほどぶっ刺さる人は極めて少ないだろうとも思う。
心のアンテナを全く向けずに観ると、「ハチャメチャでサイケなクレヨンしんちゃん」的な印象に留まってしまうだろう。
だが待ってほしい。この映画がみせるクレヨンしんちゃん的なノリの中に垣間見える「マジな表情」にぜひ注目を向けてほしい。
この映画は、全ての人生への讃歌だ。
誰しもがどんな生き方をしてもいい。悪人だっていい。金持ちも貧乏も関係ない。人種や思想なんて、言うまでもない。
ただ、前を向いて、人生を面白がって、生きてさえいればいい。
言語化するとありきたりで説教臭いのだが…この映画を観ると、そのような本質的なことを感覚ベースで叩き込んでもらえる。
仏教や禅がもたらす心へのポジティブ作用を、インスタントに得られる映画といっても過言ではないのではなかろうか。
この映画が語る「人生の本質」は、そのような包容的なメッセージだけではない。
極めて激情的でプリミティブな、人の思い、衝動、突き進む情熱…
生きる上で湧き出るそれらのエネルギーに対する描写も、あまりにも見事だ。
例えばヒロインのみょんちゃんと交わるシーンは。「官能的」の次元を遥かに超え、極めて「写実的」だ。セックスとはつまり、ああいうことだろう。
そしてラストシーン…「前方の一点に向って突き進む」ことのプリミティブさよ。
ジェットコースター、スペースシャトル、空飛ぶヒーロー、生まれる瞬間、死ぬ瞬間…人間にとってのあらゆる「とてつもない」に通じるそのイメージを携えながら、物語は大爆発する。
そして、オープニングとエンディングでの、日本の街に咲くあらゆる人生のモンタージュ。
宇宙があり、地球があり、人類があり、社会があり、家庭があり、自分があり…
その連綿たるパターンの中に確かに自己が存在していること、ただそのことに甚だしい感動を覚える。
仕事、人間関係、お金、病気…
どんな悩みに苛まれた時であれ、「ただその中にいる」ことがこの上なく最上級にヤバく、それだけで人生は満点だということを、心の底に刻もう。
本当にこの人生に生まれて、今の家族や友達に囲まれて、この映画を観られて、よかった。
これから死ぬまで、ずっと元気に生きよう。
※ちなみに、あまりにも衝撃を受けたのでその後色々と調べたが…
この作品が織りなす強烈な感動のフィクサーは、監督の湯浅政明でも原作者のロビン西でもなく、おそらくプロデューサーの田中栄子だということをぶっ刺さり諸賢についてはぜひ覚えておいてほしい。(もちろん、湯浅監督やロビン西の仕事も素晴らしいことは言うまでもないが)
採点
★10:別格の思い入れ。殿堂入り。