シラフじゃない人へ捧ぐビートルズ

Date
2022/05/01
Update
2022/8/15 15:01
Tag
アート
音楽
サイケ
僕が選ぶ、特にトリッピーなビートルズの曲9選。
「ビートルズそのものやメンバー・楽曲の良さを体系的に伝える」という要素は一切ない。
9曲の変遷が、ひとまとまりのトリップの変遷だと思って楽しんで頂けたら幸いだ。

【1:ブルー・ジェイ・ウェイ】

時間とともに精神が変容していくさまをハッキリと知覚し、期待と不安が混じるなか深く沈みこむ。それはまるで、非日常に身をゆだねることへの覚悟を問われているようでもある。

【2:サン・キング】

突然、サバンナの草原のような風景に包まれ、直前までの不安が掃き捨てられる。「もとよりこの世には自然しか存在しない、言語的な枠の中で意味を探すのはやめよう」と、安全具を外して飛び降りる。

【3:シー・セッド・シー・セッド】

着地した先は、ディズニーランドの世界だった。パレードの喧騒のなか時折聞こえるキーンという音が深い酔いを自認させる。意識と体をクネクネと踊らせながら、精一杯に感じる。

【4:トゥモロー・ネバー・ノウズ】

淡々とするリズムが、興奮の合間のクールダウンをもたらす。それはまるで長編映画のインターミッションであり、ライブステージの幕間のBGMであり、子供のころ夢中になったゲームのメニュー画面のようだ。ここまでの時間を見つめ、「大丈夫、今日の酔いは明らかに楽しいものだ」と確認することができる。

【5:ディア・プルーデンス】

直前までの冷静さもむなしく、ふたたび「ハチミツの中を自由落下していく」かのような速度で深い世界に沈み込んでいく。体の中心、胸の中心からあたたかさが拡がる。

【6:レイン】

酔いのピーク。言葉は残しづらい。

【7:セクシー・セイディ】

酔った自分を諌めるかのような音は、紳士的であり、決して脅迫的ではない。人として本当に大事なことを父に教えられた子供のように、勇気づけられ、使命感に近い感覚が湧き上がる。

【8:リアル・ラヴ】

酩酊のなか垣間見た自らの勇気、非日常、親の愛、それら全てがつながり、ひとつとして理解される。宗教的な含みは一切なく、自然と両の手をあわせた。

【9:ジェラス・ガイ】

社会や理性から逃避し、耽溺していた自分を恥じる。ただ同時に、後悔に意味がないことも理解している。全て受け入れ、自分自身の人生を鑑賞するようにして、ただただ万感の思いに包まれる。